お問合せ

スマホ専用ページ
「歯医者大作戦」を見る

診療の紹介

テレスコープ義歯

神ならぬ身の事、ヒトの判断に絶対はない。
 ことに私は判断の結果が思うに任せず、長年悩んでいる。
 マズイ事に、私の歯医者の仕事は重要な判断を迫られる局面に満ちているのだ。
 診療室で亀甲占いなど始めるのも異なモノと考え、懸命に自前の判断 (診断) に徹しているが、信用が得難いフンイキは容易に瞼に浮かぶであろう。
 しかし、私のみならず患者さんご自身も適切な判断が必要である。(主治医に私を選んだ判断の是非は割愛する)
例えばイレバなど百円ショップの買い物のノリで選ぶべきではないが、選ぶヒトは現実にいる。
 そのため患者さんの判断を、私が判断しなければならないのである。
 このフクザツな順列組み合わせの中で、長年、ほぼ故障無く歯医者が運営されているのだからフシギと言う他ない、ここに神意すら感じるが、神も私の高潔な人格にほだされたのであろうか。
 うちのカミさんに話すと、『バッカみたいとは思ってたけど、みたいじゃなく、そのまんまだわ』と言われた。

 

【テレスコープ義歯】

 テレスコープ義歯は部分イレバの一種であり、約40年も昔には一大ブームであった。
 ブームはいずれインプラントなど新顔の登場で終焉が来たが、今日でも、臨床上の価値は十二分なモノがある。
 これにも無数の種類があるが、典型的と考えられるものに、ブリキの茶筒本体とフタの関係に似た維持装置を応用したモノがある。
 つまり患者さんの歯に装着される内冠と、イレバ本体に付属する外冠なる金属の被せ物からなる、はめ込み仕掛けでイレバを支えるのだが、望遠鏡の内筒、外筒の関係をイメージしても、わかりやすいと思う。
 うまく使えば維持安定性は、保険などでおなじみのハリガネイレバの比ではなく、顎の骨格に問題のある症例にも応用可能な事も多い。
 また、よく聞かれる事のひとつに、インプラント補綴との比較があるが、患者さん個別の状態や事情は文字通り星の数ほどもあり、概して優劣を論じられるモノではない、国会の証人喚問の如き結論となるのがオチであろう。
 草の根のいち歯医者としては、歯槽膿漏治療の仕上げにテレスコープ義歯を応用する歯周補綴など、インプラントよりニンゲン的な感じがして好きである。


【テレスコープ義歯の応用】

before
〇〇さん、♀/35Y
Apert(アペール)症候群様の頭蓋骨格と顔貌であるが程度は軽い。
上顎が劣成長につき、骨格性反対咬合であるが、既存修復物に、審美性、機能性ともにご不満である
after
上顎はテレスコープ義歯を、superimpose式に装着する事で、上顎の劣成長をカバーした。
下顎は、ミリング義歯である。

before
初診時、AO-BOギャップが大きいため、不自然な歯軸傾斜の差し歯が装着されている。
ほかの部分も、修復物の不適合をはじめ、歯槽膿漏や、歯内療法の不備がめだつ。
 
after
上顎に、コーヌスクローネによるテレスコープ義歯を装着し、前後、横方向の骨格のボリューム不足をスーパーインポーズ(重ね合わせ)式に改善した。歯軸のフンイキも自然になった。
下顎は、ミリング式のテレスコープ義歯が装着されている。


【今回のテレスコープ義歯の上顎の状態】
オーソドックスだが、この形式の強みのひとつが驚異的な耐久性である。あと、20年は、無事であろう。

【同じく下顎のミリング義歯】

〇〇さんとは、約3年のお付き合いであった。これだけのイレバを作り上げるのは、それだけの時間と、労力と、なにより、ヒトとしての信頼関係が重要である。チャンスをいただいた〇〇さんには、感謝申し上げる。


【思い出のテレスコープ義歯】


こういう、メカニカルな感じがたまらないのである。
上に戻る↑
地図を拡大する