ニコライ2世症候群
矯正歯科の同業者増加に伴い、治療説明のみ希望する患者さんが多くなった。
もちろん、説明だけとはいえ仕事なので、こちらも真剣に接するのだが、そのうち大変失礼ながら、なんか勘違いされているのではないか?と、感じる場合がある。
いわく、判で押したように“ブレ−スは透明なのか、歯の裏側からはできるのか”といった事ばかりに話が収斂してしまい、それらの実例を見せると、ようやく満足する事が多い。
しかも、「他のところもあたってみる」と言い出すのは忘れないのだ。
実際の症例やPCからの画像処理を通じ、ご自身の状態を捨象して、治療後のイメ−ジを膨らませるまでに至る事はまず無い。
つまり、カットの具合はどうでもいいが、使うハサミの種類ばかり気にする美容院のお客さんみたいなものである。
次のところでも、おそらくそういう場面が繰り返され、ようやくドクタ−ショッピングに疲れた頃、最後に立ち寄った歯科医院を選ぶに違いない。
これを『ニコライU世症候群』と呼ぶ。
ニコライU世は、言わずと知れた旧制ロシヤ帝国最後の皇帝であるが、政治手腕に関する限りイマイチだったとされる。
つまり、あまりにも取り巻きが多すぎ、会議では数多い意見をたった一人で判断することを余儀なくされた為、ついには最後の発言者の意見を、そのまま採用する事がままあったというのだ。
やがて日露戦争、第一次世界大戦に破れ、最後には革命の嵐のなか家族と共にシベリアの露と消えた、悲劇のヒトでもあった。
(矯正歯科は危険なものではありません。念の為。)
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