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診療の紹介

歯の外傷

労災保険の指定医をしている。

労災保険は一般の健康保険とは違い、被災された労働者の方の負傷、疾病等の保険であり、労災指定医は、その専門家である。
労災指定医のいる労災病院や労災保険指定医療機関にかかると、患者さんの窓口負担がゼロと言うメリットもある。

労災の患者さんのケガは歯医者のナワバリにおよぶ事も多く、大きい骨折以上の処置は設備上ムリだが、歯の外傷程度なら、私のような者でもお役に立つのである。

この歯の外傷は、おおむね、歯が欠ける、もしくは歯が抜けたり骨にメリこんだりする、の2種類に分けられる。

労災患者の〇〇さんは、後者のケガでおかかりになられた方である。

作業器具がぶつかって左上の犬歯が抜けたという主訴で来院されたが、レントゲンを撮ると、くだんの歯は、上顎の骨に深くメリこんでいるのがわかった。

抜けたと思っていた歯が見つかったからといって喜ぶのは早い、歯は適切な状態で適切な場所に収まっていてこそ“ナンボのもの”である。

結局、選択した治療は、矯正式に“ゆっくり”元の位置に戻すというものであった。

紆余曲折はあったものの約1年半をかけ、ほぼ復位させ、労災保険の言うところの症状固定(これ以上、治療効果がない状態)としたが、これまた労災保険につきものの後遺症(残遺症状)という問題は残る。

労災は被災しないに越した事はない。私のオフィスでも『安全第一』、もしくは『右の頬を打たれたら、せめて左の頬は打たれないように』をモット−としている。

ことに後者は、かの絶世の聖人ノー・キリスト(パラレルワ−ルドに、いらっしゃるとされる)が長年の結婚生活で得た座右の銘と同じものであり、身も蓋もないなかに、切実な共感を覚える方もいるのではないか。ともあれ、皆さんの日々のお仕事が安全に終始する事を希望している。

成人/♂ 労災で左上犬歯が抜けた”と○○さん。
症例画像
レントゲンを撮ると、くだんの歯は、上顎骨に、メリ込んでいるのがわかった。
症例画像
  初診より1ヶ月後、キズが安定してきたので改めて粘膜に切開をいれ、くだんの歯を探し当てた。
苦しい戦いであったが、なんとかワイヤ−の取り付けに成功した。
症例画像
慎重に引き出しを続けた6ヶ月後の状態。この段階で喪失した付着歯肉の移植も行った。歯周のハグキは、ほぼ正常なフンイキとなっている。
症例画像
ほぼ目標の位置に、ハグキや骨共々、復位させる事に成功した。
症例画像
仕上げに歯冠部をセラミックス修復した。
約18ヶ月ぶりの○○さんのスマイル。


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