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診療の紹介

歯槽膿漏とイレバ
―歯周補綴―

 歯医者も医療の一部であるので、日進月歩の中、古い治療法は、当然、淘汰される、されねばならぬ。
とは言え、リーチが、かかった治療法には、苦労して学んだ事とて、惜別の念すら覚える事もあるが、歯周補綴もそのひとつである。(あくまでも、私の主観である事を、お断りしておく)

 歯槽膿漏はヒトが歯を失う原因の代表的疾患である。
全部の歯が抜けるまで待つ、一部の画期的治療法は別として、フツーは歯槽膿漏の感染をコントロールして残存歯の状態を安定させ、歯の抜けたところはイレバとかで補う、2本立ての治療をする。
つまり、残存歯を落ち着かせた後は、キチンとした噛み合わせを与える仕上げが必要なのだが、“のど元過ぎれば熱さを忘れ”的国民性のゆえか、治療の折り返し地点あたりでモチベーションが下がるヒトも多く、再び、因果の歯車が回る事となる。
諸行無常である、歯槽膿漏治療は、そもそもリセットではない。 治療後とは言え、残存歯には、しかるべきハンディキャップを与えねばならず、欠損部を補うイレバは、あくまでも残存歯に優しいモノでなければならない。
おざなりなイレバは、ロクに機能しないばかりか、自動抜歯器具にもなりかねないのだ。

 この問題の解決につき、残存歯の保存に努めた上で、欠損部に各種テレスコープシステムを応用した旧来の補綴法があり、これを歯周補綴と称する。
さらに、近年、歯周補綴を圧倒的に凌ぐ勢いであるが、歯槽膿漏歯の保存より、むしろ抜歯を優先(無論、程度による)して、出来た欠損部をインプラントで補綴すると言うモノがある。
実際、補綴系の学会発表でも、全体の8〜9割方はインプラント補綴関連に占められ、歯周補綴はサシミのツマ程度の扱いだったりするが、私は個人的には、可能な限り患者さんの歯を保存してあげる立場の歯周補綴が好きである、草の根の一歯医者として、この治療法をいつまでも存続させたいと願っている。
そもそも、歯周補綴がインプラントに劣っているわけではない。
総合的に両者は、ほぼ同等と思ってよいのだが、歯周補綴に必須の、上述のハンドメイドによる特殊技術が、主に熟練した技工士さんの後継者難から、ロストテクノロジーとなりつつあるのだ。(逆に、インプラント体は工業製品であり、工場で、いくらでも大量生産できる)

 されど温故知新、マイナーながら、長年、皆さんのお役に立って来た歯周補綴が絶滅危惧種とは、あまりに惜しい。
いつの日か、リバイバルで天然記念物とかなるやも知れぬ、不肖エガワ、孤塁を守るもよしである。

before ○○さん /♀ 20Y+α
全顎に、中程度以上の歯牙欠損をともなう歯周疾患あり。
症例画像
歯槽膿漏治療後、歯周補綴にてメンテナンスに移行する事を計画。
症例画像
上顎前歯部の歯周外科の状況(下顎も同様)。
幸い、骨の整形は最少限度ですんだ。
症例画像
上顎の歯周補綴システム概要。

After/口蓋部よりの状況。
症例画像
症例画像
実際の上顎のミリング支持装置と義歯本体、さらに、義歯装着時の状況。

症例画像
上顎は歯槽膿漏治療後、残存歯にミリング処理を施した支持装置による可撤義歯にて補綴。
下顎は、左右犬歯間を、連結式セラミックス冠で補綴。
症例画像
上顎義歯、撤去時の状況。

 

 

別のテレスコープシステムによる歯周補綴。内外冠はC.S.Cのようなルーズフィット、維持をリーゲルATによりコントロールしている。

〇〇さんは、“歯槽膿漏”のコラムにも写真を使わせて頂いた。平成11年の装着であり、今回のメンテナンスで、実に12年が経過した事になる。ひとつの部品の欠落もなく、瑞々しいばかりの状態である。

症例画像
誇らしげに笑う〇〇さん。



これも思い出深い。やはり10数年前に装着した、このテレスコープ式歯周補綴の嚆矢であるが、今でも全くモンダイなく機能している。

 



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