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インプラントトラブル

 インプラント自体、素晴らしい治療ツールである事に異論は無い、長年苦楽を共にした戦友のような気さえする。
ただし、運用に難があると、ヘンになるのは確かだ。

 アメリカ大統領選挙の公開討論会などでおなじみのディベートは、要するに、相手を遣り込める技術である。
その手練手管のひとつに、“一点法”と言うのがある。
遣り込めるべき相手の発言の、わずかな失点、失言、落ち度を巧みに炙り出し、そこだけを集中的に攻め立て、相手を閉口させる事ができれば大成功である。
審判たる聴衆は、ディベートの争点の主題からはずれ、全体の雰囲気に呑まれて、優勢、劣勢の心証を形成する場合が多い。
ディベートの手練手管はまだまだあり、結局、スキルがものを言うが、言い分の応酬の上でジャッジが成される分、救いはある。ところがTVに代表される報道は、一方的な言い分を聞くだけのモノである。これで、日々、刷り込みを受けているとしたら、コワイ事ではないか。
(ディベートに勝ち難い中、私が家内に連戦連勝なのは、負けるが勝ちという高度の戦略を採用している為である)

 インプラントに関する、あるTV特番が、放送された。
H24年1月の、NHKの“インプラントトラブル急増”(クローズアップ現代)なる番組である。
内容的には、頂門の一針と言える、さすが天下のNHKであった。
“インプラントトラブル”と言う、痛いテーマに絞られた放送内容である、そこを拡大増幅し、視聴者に不安を与える事には、見事に成功している。
対極として、インプラントの大家(20年前、彼のコースを受講した事がある)が、至極もっともな、中立的、正統派的コメントをされたのだが、実際にトラブルを起こしたセンセイの言い分が無いなど、かろうじて全体のネガティブな印象を覆すには至らない、あざとい編集になっている(気がする)。
やんぬるかなである、番組以降、インプラント希望の患者さんは、明らかに減った。
もっとも、不景気もあり、番組放送のはるか以前、東北の震災直後あたりから減っているので、過去に遡ってまで影響を及ぼしたのかも知れない。
げに、凄まじいマスメディアの威力と言えよう。

 後日、いやな予感がするなか、学校歯科医をしている高校の、学校保健の集まりで講演をさせていただいた。
講演後の、質疑応答の場は、重く淀んだ空気で満たされていた(エヤコンの調子が悪かったのだ)。
さらにエヤコンの温風と共に噴出したのは、案の定、講演内容とは無関係な、この番組に関する質問であった。
なにしろ出席された皆さんの多くが、この番組を見ていらっしゃる。
能天気度のテストではない、インプラント治療を予定されている方は逡巡するであろう、すでにインプラント治療を受けられた方は、ギリシャの国債でも持っている気持ちになるであろう、番組を見なかった方は、なにも感じないであろう。
ウロンな事を言うと、歯医者全体の信用にかかわると考え、『歯医者に行かなければ解決します』と言いたかったのを辛うじて止め、『現況のインプラントは、貴重な治療ツールである事をわかって頂ければと思う』とのコメントをして差し上げた。
実際、ドテから歯が生えるクスリでも開発されない限り、歯医者治療で、インプラントをクサレ縁扱いする事はできない。
ホトボリが醒めるには暫くかかろう、毀誉褒貶は世のならいとは言え、困ったモノである。

(私は小学校時代を、岩手県の江刺市で過ごした。朝礼の時、校長先生が『イヌアッチケーのヌースでは・・・・』などとやっていたのを、懐かしく思い出す)



私のオフィスにおける“インプラントトラブルの実例”
症例画像
施術8年目に、インプラントフィクスチャーが折れてしまった。こうなると、リカバリーは容易ではない。インプラントは正常に機能する時と、イカれた時の落差が大きいと言える。

 

折れたインプラントを除去、つわものどもの夢のあととでも言うか。(結局、約1年以上を費やして、インプラントの再植を実施するハメとなった)

 
症例画像
当初、予算の関係で左臼歯部のインプラント補綴を断念した経緯があった。結果、前歯部分のインプラントのみ負担がかかり、破折に至ったのである。今回は、その反省も踏まえ、〇〇さんにも必要な予算をご都合いただいた。



【根性のイレバ】

インプラントご希望の〇〇さん/65ages/♂ 健康保険義歯装着時
症例画像
実は、インプラント不適症例である。そもそも、現況で右中切歯と対称的にインプラントを植えられるメは無い。
さらにドテのボリュ−ムが足りず、無理にインプラントすると、かなりヘンテコになるのは必定である。
オトガイや、下顎枝よりの移植骨採取による骨造成も考えたが、侵襲を考えれば、とてもソロバンがあわないであろう。
結局、イレバで対応する事になった。
他院のインプラント専門医にまで、セカンドオピニオンを頂いたが、やはり、インプラントはネガティブと判断された。
なにより〇〇さんには、納得していただけて安心した。万一、強行したら、全員が不幸になっていたであろう。

約半年後、ホケン義歯に物足りなくなった〇〇さんの依頼で作り直した自費の“テレスコープ義歯"

症例画像
症例画像
このイレバを装着して約5年だが、一度もトラブルはおきていない。 インプラントもイレバも、ケースバイケースとしか言えないが、トラブル時のリカバリー の容易さでは、概してイレバに一日の長があるようである。

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